新築工事現場ルポ
第六回(仮称)朝日リゾートプロジェクト 仕上げ工事その1 各部屋の作業状況と進捗状況
現場では、昨年12月に地鎮祭を滞りなく終え、1月から本格的に作業が始まり、コロナ禍の影響で何もかもが不自由な状態の中、現場に携わる職人さん同士がお互いに協力しながら順調に作業が進んでいました。
前回、6月10日に紹介した屋上を含む各階のコンクリート打設工事も完了し、作業の中心は仕上げ工事へと進んでいます。
今回は、7月2日・17日に現場に伺って、仕上げ工事についてお聞きした内容を紹介します。
入口ゲートから入場すると、建物の完成予想図(パース)、作業を進める順序が一目でわかる工程表が貼られていました。現場監督や現場主任、スタッフの方々はこの工程表を見て状況を確認しながら、工事を進めていく形になります。
建設現場の体制
建物を建てる場合、その建物の構造や規模・仕様によってさまざまな職種の作業員が係わります。職種によっては有資格者でないと担当できないものも多々あります。
ここでは、各担当者がどのようなポジションにあるのかを、通常の場合を例にとって、その一部を紹介します。
現場監督(現場所長)
現場監督に課せられる役割は、一言で言えば「工事現場を監督する」と言うことです。
工事現場における「工程管理」・「品質管理」・「安全管理」・「予算管理」を担う役割があります。
よく耳にする「現場代理人」とは、施工や契約に関する全ての事務事項を処理する役割を持ち、現場監督とは携わる仕事の内容によって区別されます。
監理技術者
監理技術者とは、現場の技術の水準を確保すべく配置される技術者のことであり、工事の施工に携わる者の指導や監督を職務とします。
主任技術者
主任技術者も監理技術者と同様の役割を担いますが、現場の規模によって区分され、小さい規模の工事を主任技術者、大きい規模の工事を監理技術者が担うと言うことです。 そもそも、建設業者には義務があり、全ての工事現場には必ず技術者を置かないといけません。
朝日リゾートプロジェクトの現場体制
小原建設では現場ごとに、現場体制に従って「リスクアセスメント検討会」を設けています。
これは、現場に潜む危険性や有害性を先行して見つけ出し、事故を未然に防いだり低減したりするための検討会となります。
作業する前に危険性があることを見つけ出すことが重要です。
また、裏方の組織として「安全衛生管理委員会」を設け、株式会社小原建設社長を委員長とし、同じく小原建設工事部長・協力業者の委員の方々と現場の安全について話し合いの場が設けられています。
現場組織図
朝日リゾートプロジェクトの役割組織を図式化すると下記のようになります。
現場所長が監理技術者を兼務する形となります。
各担当の人数はプロジェクトの規模によって変わります。
会議・打合せ体制
小原建設では現場での作業の他、定期的に会議を設け、進捗状況の確認から方針の決定、近隣の苦情に関する対応など様々な事柄について検討が行われています。
会議名 | 参加者 | 開催頻度 |
---|---|---|
定例会議 | 施主・設計監理者・現場所長・設備・電気の 各担当者 | 2週間に1度 |
各分科会 | 設計監理者・現場所長・設備・電気の各担当者 | 都度 |
朝礼・昼礼 | 現場所長・協力会社職長 | 毎日 |
定例会議
定例会議は、概ね2週間に1回、2時間程度開かれる会議になります。
参加メンバーは、施主(建主)も含め、設計監理者、現場所長、設備、電気の各担当者が参加します。約10項目の議題について話し合われます。
定例会議の内容を一部紹介します。
1.前回質疑応答の確認や承認
主に、前回の内容を振り返り共有認識と承認事項の確認を行います。
2.工事工程について
直近の工事工程について説明と確認を行います。
月初めには向こう3ヶ月間程度の工程表を提示し、設計管理者の現場立ち合い確認等の日程調整を行います。
3.官庁関係について
建設を進めるにあたって、区役所、検査機関、労働基準監督署などへの申請書類の提出が必要になる場合があります。
その書類の状況などの確認を行います。どんな届け出が必要か、分かり易いもので言えば、警察署に届ける道路占用許可申請書がそれに当たります。
これは、建設現場にコンクリート圧送車やミキサー車などが停まり、長時間道路を占有する場合があることから、書類の提出を行いますが、この書類が受理されないと作業に支障が出てしまいます。
4.近隣関係
近隣からの苦情がある場合は、苦情の内容について共有し対応・改善を検討します。
また、近所で起こっている身近な情報でも共有の必要があることであれば共有します。そのようにしておくことで、イレギュラーな事柄がおこっても対応できるように備えておきます。
5.施主(建主)からの報告・指示
施主からの報告事項と要望等の指示をします。
6.設計監理者からの報告・指示
例えばその週の予定の報告や、作業に指示がある場合はここで共有されます。
7.今回提出図
提出図面とは、設計図を基に作成された施工図が主体となります。
当該工事の場合は、現場所長が自ら施工図を描いています。この施工図を設計監理者がチェックし、チェックバックされた施工図を現場に渡ることとなります。
この施工図が完成することによって、各現場の職人さんに指示を出し図面を基に作業をすることが出来るようになるのです。
そのほか、懸案事項の確認や作業にかかわる質疑応答等が行われます。
最後に次回の日程を決めて終了になります。
7月2日 屋上の様子
6月10日にコンクリート打設工事を行っていた屋上。コンクリートがしっかりと固まって、これから防水工事が開始されるそうです。工事に利用する資材や機材がまとめておかれています。屋上の床部分をよく見てみると平らではなく、なだらかな傾斜になっています。これは各箇所に設置された排水溝に水が流れるように意図されたものです。
窓枠の設置
4階ではサッシの取り付けをしていました。先ずはコンクリート打設後に、サッシの枠のみを取り付けます。ガラスは重いので後からはめ込みます。この作業はコンクリート打設後の縦横等の寸法と合っていないとコンクリートを削りながら調整をしていく必要があり、寸法通りに打設されていることが肝になります。
2階では、既に、サッシもガラスも取り付けが完了していました。青い養生テープが張られている場所には、次の工程で「シーリング」というゴム製の素材が充填されます。
これは硬いコンクリートと、金属で出来たサッシとの取り合い部分の緩衝材としての役割と窓周りの隙間を埋める防水性を高める役割を持っているそうです。
壁面にある溝の意味
コンクリートで出来た壁にある溝の意味は、デザイン(見た目)ではありませんでした。
打ち継ぎ目地と言って、コンクリートを打ち継ぐ際、後々発生するクラック(ひび割れ)から雨水などの侵入を防ぐ為に計画的に設けられた溝です。この部分にも後ほどシーリング材が充填されます。2階の壁面にはすでにシーリング材が充填されていました。
ベランダの様子
ベランダでは、左官作業が行われていました。離れた位置からでは分かりませんが、近くで見ると建物側から外側に向かって傾斜が設けられているのが分かります。
これは、屋上と同じように排水溝に、雨水が流れるように緩やかな勾配をつける必要があるからでした。
壁には給湯器に接続される給水管等が設置されていました。
青が水で赤がお湯の配管とのことでした。
室内の様子
室内の工事も進んでいます。下層階から順次、作業が進められていました。
色々な職種の職人さんが炎天下の中、黙々と作業していたのがとても印象的でした。
4階の1室では電気や換気設備などの配線・配管工事が進められていました。
天井裏に隠れて見えない部分にもたくさんの配線が取り付けられることが分かります。
また、お風呂場には浴槽(ユニットバス)がどの部屋も設置されていました。浴槽(ユニットバス)は間仕切り壁を設ける前に据え付ける必要があるとのことです。
先に間仕切り壁を設けてしまうと、入口の幅より大きな浴槽やユニットバス用のパネルを入れることが出来なくなってしまうからです。
その為に、まず浴槽を据え付けた後に周りの壁を設置していくことになります。
それでは、お風呂場をリフォームする時はどうするのか?
古い浴槽は切断して搬出する方法や、壁を一部壊してから浴槽を取り出し交換する方法が用いられるそうです。
モルタル充填前に窓枠(サッシ)を支える仕組み
室内側から窓枠(サッシ)の設置を見せてもらいました。離れた所からでは良く分からなかったコンクリートと金属の枠を繋ぎ留めるための様子がよくわかります。コンクリート側に金属のくぼみを設置して、窓枠側と短い鉄筋の棒を溶接して外れないようにしっかり固定していました。細かい部分ですが、こんなことまでしているのかということに驚きでした。
断熱材の厚さを示すピン
各階の部屋を回るとピンク色の断熱材が各所に吹きかけられていることが分かります。
固まった様子を見る限りでは、発泡スチロールのような柔らかい弾力性のあるものだと言う印象を持っていましたが、触ってみると弾力性があると言うよりはしっかりと固まっている手触りでした。
そして、よく見ると色々なところに青い丸いものを発見しました。
断熱材の上にはだいたい取り付けられていて、話を聞くとこれは、画鋲のようなピンということでした。表面には数字が表示されてあり、例えば25と書いてあるピンがあると、その断熱材の厚さは、25㎜吹きかけられているということが分かるそうです。勿論、ピンが浮いていると言うことはなく、しっかりと刺さっていました。
ピンには数種類の色があり、断熱材の厚さによってピンを使い分けているそうです。
また、凹凸ができないように印をつけて正確に作業をしていることがよく分かりました。
石膏ボードを設置する為の下地材設置作業等
浴室やトイレ、ウォークインクローゼットなどの部屋を区切るために、金属の支柱を取り付けます。
そこに石膏ボードを取り付けていきます。ひとつひとつ確認しながらきれいに設置を進めていました。
7月17日 現場に再訪屋上の様子から見学
日付は前回から15日後経過し、屋上では防水工事が進んでいました。
アスファルトが敷かれている状況で、最終的には3層構造で防水が施されるそうです。
これは、脱気筒といって、雨や室内の湿気などで屋上の防水層とコンクリートの間に発生す水蒸気を排気するものとのことです。これを取り付けることで防水層の耐久性が上がるそうです。この脱気筒は平米あたりの設置数が決められているそうです。
外壁の様子
壁面には空気の通り道に取り付けるベントキャップが設置され、コンクリートの目地にもコーキングが充填されています。
以前のベントキャップは丸形(浅い形のもの)が主流でしたが、最近は丸形でも深いもの(所謂像の鼻タイプ)や四角い形のものが利用されているそうです。
窓にはガラスも取り付けられていました。ベランダ側のガラスの取り付けは二人一組で行われるそうですが、たくさんあるサッシに重たいガラスを取り付けていく。それを想像するだけでもすごい作業です。
給湯器の配管金具の設置
給湯器の配管にも金具が設置されました。
ベランダの様子
2階のベランダには手すりが設置されていました。オーナーのこだわりが伺えます。
下げ振り錘(さげふりすい)で垂直を確認
特に気になったのは、ベランダに設置される竪樋の所に、下げ振り錘(さげふりすい)と呼ばれる、糸に重りがついた道具を垂らしていました。これは建物の垂直をみるもので、これがずれてしまうと適切に設置することが出来なくなってしまうので重要な道具です。
すべての配管部分に取り付けられていました。
1階玄関部分のタイルの設置作業
1階では各部屋の玄関床部分のタイル貼りが進められていました。
最初の部屋では、タイルの割り付けをしてタイルを切る作業中でした。
タイルが敷かれる床に線を引き設置する目印が書かれています。それぞれのタイルを置きながらタイルを測定し、印をつけタイルカッターで切る準備を進めていました。
更に作業が進んでいる別の部屋では、玄関にモルタルが敷かれ、正にタイルが設置されている状況でした。モルタルはタイルの裏にもそれぞれ塗られていました。
タイルを一定間隔で敷き詰め終わった後は、タイルの上を「トントントン」とハンマーの柄でたたいて音を確認すると共に位置の微調整も行います。この音に違和感がある場合はうまく設置できていないので再度設置し直すことになります。
タイルの設置後は、目地部分にモルタルを充填する作業になります。
目地の色もタイルに合わせて色が変えられるそうですが、このマンションでは濃い色のタイルを用いていたので濃灰と言った色で仕上げられているそうです。
最後にタイル表面を水でふき取り作業完了です。
(仮称)朝日リゾートプロジェクトの玄関タイルは汚れに強い
ルポ中に職人さんが見せてくれたのはこの現場で使われている玄関タイルの特徴でした。
タイルの汚れに対しての強さを見せてくれました。まるでテレビの即売番組を見ているみたいです。
油性マジックでおもむろに落書きをはじめました。その後一枚の布を水で濡らして落書きを軽く拭き取る。これだけでタイルがきれいになりました。
玄関は毎日出入りして汚れやすいので、掃除が楽にできるのは利用する人にとっては非常にありがたいと思います。とても驚きました。
石膏ボードの取り付け設置作業
次は、断熱材(発砲系ウレタン)の上に石膏ボードを貼る作業を見せていただきました。
断熱材とは7月2日に青いピンで印がつけられていたピンク色の壁です。適度な隙間をあけながら石膏系の接着剤を付けていきます。
最後にメジャーやレーザー測定器を用い、水平と垂直を見ながら適切な位置に調整し設置すれば完了です。
床材の設置作業
(仮称)朝日リゾートプロジェクトで使われている床材は、全て無垢材を採用しています。
そして種類も4種類あり部屋によって分けていると聞きました。ここにもオーナー様の拘りが垣間見えたような気がします。
無垢材とは、複数の薄い板が張り合わされて作られているベニア板のような合板や集成材ではなく、1本の丸太から切り出した自然のままの木材のことを言います。
無垢材の場合、化学薬品の入った接着剤を利用しないため人にやさしい天然素材になります。
設置された床材をよく見ると、周りはくぼみ(メスさね)が作られていて、床に取り付けたときにオスさねと合うようになっていました。取り付けの工程は、ボンドを床に塗り、床材を置き、ハンマーでたたいてはめ込んだのち、鋲で固定をする形になります。
エレベーターは現場で組み立て
建設現場で気になったことの一つにエレベーターがどのように設置されるのかと言うことでした。
これは、よくよく考えれば当然のことで、プラモデルの様に様々な部品を組み立てて設置をするものでした。現場ではエレベーターの設置に向けて建物に部品を設置していく作業が進められていました。
動画で見る『仕上げ作業その1』
いかがでしたでしょうか。
すべての階でいろいろな仕上げ作業が進められていました。
鉄筋コンクリートの建物を建てるという状況に立ち会うことがほとんどないため、実際にどのようなことが行われているかは全く知らない状況でした。
建物が歪まないか、垂直には問題ないかなど確認しながら細かく注意して進められていることに感心しました。
建物ができてくる過程はとても興味深く皆さんにもその様子ができる限りお伝えできればと思います。
次回は、仕上げ作業その2という事で、作業進捗やその他の工事について見ていきたいと思います。
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『小原建設』では、お客様に対して責任を持ち、快適な生活を送って頂けるように、営業担当者・設計担当者・工事担当者がチームとなって、お客様をサポート致します。
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